kikuchif030604 「余暇政策論」レポート

テーマパーク生き残り戦略〜立地条件と集客効果〜      k010117 菊地史子

 

1.テーマパークとは

そもそもテーマパークとはアメリカから輸入されてきたものである。その定義は「あるテーマに沿って、レジャー施設のレイアウト、建築様式、造園、娯楽の内容、従業員のサービス、販売する商品などごみ箱に至る前、それぞれの要素のバランスが保たれ、調和の取れた世界を構成する」ものである。

 

テーマパークラッシュ

テーマパーク元年、1983年、東京ディズニーランドと長崎オランダ村開業。以降、バブル経済時期と同じくし198819990年前半までに約80園ほど開業している。

なぜこれほどつくられたか…まずは、「モノから心へ」というキャッチフレーズのもとに、高度に発展してきた日本の経済発展がある。可処分所得が増え、労働時間の短縮により、観光産業が一躍脚光を浴びてきたのである。

そういった背景と、各市町村が経済の活性化を目指して観光産業に着目。一方、企業も日本経済のソフト化により  経営の改革を迫られてきたこともあって、経営の多角化と再構築を図るために、観光産業に参入してきたといえる。この自治体と企業の思惑が一致したのが、観光産業であり、テーマパークであった。

 

バブル崩壊後のテーマパークの現状

バブル崩壊後にともない、大半のテーマパークが採算に乗っていないのが現状である。一般にテーマパークの投資資本売上率は約50%だといわれている。一億円の投資に対して、年間入場者数は約1万人が相場で、しかも1人あたりの消費額は5000円以上ないと採算のベースに合わないといわれている。この基準をクリアしているのは、東京ディズニーランド、長崎オランダ村、日光江戸村、東映太秦映画村など10指にも満たないほどである。

いうまでもなく主な原因は入場者数の減少である。入場者数の引き止め策の一つとして、追加投資による付加価値の創造をしないことには生き残れないということである。客の飽きの来ない感覚でのアトラクションの新設である。開業から3年目がそのタイミングといわれているが、入場者数が減少すれば、その循環が崩れてしまう。日本のテーマパークの大半がこの循環がうまく言ってないようだ。   

つまり、安易な開発計画と、開業後も見通しの過大評価、さらに基本的な条件である立地条件の悪さなどが要因だといえる。

 

 

2.テーマパークに人が集まらない、廃業につながることは

立地条件

レジャー施設を建設するに置いて最も重要な要素は「立地条件」である。

     集客創造型・・・ある程度立地条件が悪くても自らの魅力であふれているパークについては、客が集まってくるということ。Ex.東京ディズニーランド

     観光地盤型・・・立地場所が観光スポットになっていて、そこに施設を作ることで、観光客を自然と引っ張りこむということが可能だということ。Ex.日光江戸村、東京ジョイポリス

この条件を満たしていない場合、東京近郊にある、北関東自動車道等の高速道路ネットワークの範囲内にあるなど、交通アクセスのしやすいところという場所が好立地条件となる。

 

パーク自体の目的の欠如

印象に残るアトラクション、オリジナル性、「こんなパークにしたい」というパーク自体の目的が欠如していることにより、客に与える印象が薄いということ。もう一度来たいなど面白いと感じさせるものが少ないということ。

 

メインターゲットは誰か

そのパークがどの年齢層をターゲットにしているか、いまいちわからないということ。例えば、東京ディズニーランドでは「ファミリーエンターテインメント」とうたったり、都市型のテーマパークではカップルのためのイベントを行ったりする。これは、パークのイメージを印象付けるのに大きな役割を持ち、デートならそこへ、家族で行くならここへというようなイメージが作られていく。このようにターゲットを絞らず、誰が来てもいいようにというような考えのパークだと、誰が来ても、そこそこしか楽しめない空間になってしまうということがある。メインターゲットが絞れていれば、イベントや宣伝方法に効果的な工夫ができるというメリットもある。

 

接客態度

対応の悪さによって、その空間にいるときの心地よさや楽しさが変わってしまう。たとえば、トイレの場所などは、1箇所の調子が悪かったときに対応して、2箇所以上覚えておくなど、係員に対する教育が徹底していないといけない。パークや外装、アトラクションは造ってしまうと変えられない。しかし、係員の対応次第で面白さは数倍にも増すし、まったくつまらないものにもなってしまうということも忘れてはならない。

 

話題性

レジャー施設がいろいろ増えてきた現在、リピートしてもらうためには話題性が必要不可欠だ。例えば、新アトラクションや季節イベントである。最後の手段だが、閉鎖するときに、「もう2度と来られない」という宣伝をして何回かリピートしてもらうというのも、最後の集客効果がある話題である。

 

 

3.レジャー施設の成功に必要な事

 2.の項目で挙げたことを踏まえて、今度はレジャー施設全般に必要な事を挙げてみる。

 

ブランド重視

ブランドの重要性は次のよう背景から増してきている。

1)  消費の成熟化

 新しい施設を作り、新しいメッセージを伝達すれば、大量の人々が集まり、ビジネスとして成立した時代は終わった。消費者のレジャーに対する意識が成熟化し、自分にあったものだけを選択するという傾向になれば、当然だが、ひとつのレジャー産業当たりの集客力は低下する。その結果、2つの方向選択が迫られる。

     より大型でメッセージ性の強いものを創る…大型化は、投資の回収リスクを背負うギャンブルに近い。

     リピーターを作るための仕組みづくり…ブランド化するということ、この意味は単なるイメージではない。ブランドと言うとネーミングや広告づくりなどと考えやすいがそれは一部に過ぎない。

ブランドの重要性に繋がるのは後者。結果としてリピーターが作れるかどうかが鍵である。

2)  情報伝達スピードの速さ

 インターネットに普及によって情報伝達が早まり、施設が持つメッセージ性はあっという間に消化されてしまう。つまり、消費者が行く前に大体のことが分かってしまい、驚きではなく確認になってしまうということである.これは、新しさが競争にならないということを示している。

 

レジャー産業が目指すブランド化とは

・ロングセラーになることこそがビジネスゴール

ブランド化とは単なる流行や話題性を意味するものではなく、長期にわたってユーザーに「このレジャーを楽しむときには××だ」と言うような意識を持ってもらう事である。そのためには、まず、ものへの投資だけでは消費者に価値を提供できないことからスタートする必要がある。施設は差別化の源泉だが、作った時点から老朽化が始まる。どんなにメンテナンスしても施設自体が持つ鮮度は低下すること、すぐに新しい競合がより強いインパクトで登場する事を前提にビジネス戦略を考えるべきである。多くのテーマパークが施設の鮮度とともに、集客を落としている。この考えの延長には集客数の勝負から累計客単価を重視する事を意味する。リピーターが重要な事は周知であるが、どうしたらそれが実現できるかについての具体的な対策がうたれていないことが多い。常にリピーターへの鮮度の高い価値を提供できる構造を工夫し、それがユニークであればあるほど競合との差別化を図ることができる。

 

ブランド価値

ブランド価値とは何だろうか。3つの要素に分解して解説する。

1)「基本価値」…ブランドのもっとも根本的な機能や役割を意味する。

2)「情報価値」…多くの人がブランドとはイメージが重要だと思っている。実はそれはブランドの一部分であり、この情報価値に当たるところである。広告やパッケージデザインで作る知名度やイメージなどがそうである。

3)「周辺価値」…商品には直接関係ないものでも消費者が重要であると考え、購入時の選択基準にするものがある。

 

ブランド価値を向上させるということはこの3つの項目、価値を高めれば良いと言う事である。つまり、それぞれのレベルで消費者の満足はなにか?、を追求する事こそ、ブランド・マーケティングなのである。とはいえ、この3つの価値には一貫性がある.俗にブランドコンセプトと呼ばれるものはその方向性を言う。

(「高級な」「簡便性」など)

 

このブランド価値の概念ををテーマパーク、遊園地に適用してみると…

1)  アトラクションの質、種類など

2)  テーマ性、キャラクター・イメージなど

3)  接客態度、待ち時間短縮、アクセス条件など

 

ここでの基本価値はアトラクションの娯楽性の高さと種類の豊富さである。そして、情報価値にあたるものがテーマ性であり、そのテーマを与えるためのキャラクターが作る世界なのである。ディズニーランドの強みはこの情報価値の魅力である。それだけではない。周辺価値としての従業員の接客態度も重要であり、施設までのアクセスも価値の1つとしてカウントされる。

 

ブランド戦略

消費者は意識の満足、行動の満足という順番で進化してもらい、トライアル、リピートへつなげることが目的となる。その結果がロングセラーであり、ブランドである。これによって、ビジネスとして顧客満足と企業利益を両立させる事ができるのである。レジャー産業は、顧客の利用単位が複数の人数であることが多いということである。これはリピーターが新たなユーザーを生むという循環である。そういう意味でリピーターが非常に重要な役割を果たしている。リピーターにとっての鮮度(新たな発見)を提供する仕組みがブランド化のキーポイントとなる。

 

そのためには何でも新しいものを出せばいいということではない。3つの価値に一貫性がなければ消費者にとって明確なポジショニングが築けないのである。何でもあるは何にもしないと同じことである。「家族皆で楽しめる」テーマパークが一部の若者受けするようなアトラクションで話題を作っても、肝心の家族層は「自分たちに行くべきところではない」と思うだけだろう。

 

ブランドには明確な差別化ポイントが必要である.それには競合がなかなか真似できない「独自性」、消費者がすぐ理解できる「明瞭性」、そして十年二十年主張できる「持続性」がなければ、ブランドとしてのポジショニングを確立できない。一般的に差別化ポイントが基本価値のなかに成立するのが有効であるが、これは決まりごとではない。

 

ブランド化のポイント

テーマパークにおいての差別化ポイントは、アトラクションそのものである.しかし、これは投資もかかり、中期的な戦略となる。つまり、リピーター育成とは時間的なリズムが合わない。そこで情報価値が重要視される。テーマ性のあるストーリー展開ができればユーザー、特にリピーターにとって鮮度は維持されながらも、ブランドの一貫性は保てる。ディズニーランドのようにコンテンツに歴史と深みがあって初めて成立される業態と言える。

 

 

 

4.現状のレジャー施設再生への検証

市場性

     立地環境…施設が何処に建っているか、どのような魅力を備えているかなど、施設の立地環境はその施設のあり方を大きく左右する。

     人口(第1次商圏、第二次商圏、第3次商圏)…その施設が集客対象とする地域は三段階で捉える。まず、1次は日常生活圏の範囲から来場する客でおよそ30分圏域である。二次は1時間圏域に住んでいる。3次は2時間以上の圏域である。高速自動車道、鉄道によっては対象とする範囲が異なる。また、その施設に滞留する時間は、集客圏域からの往復時間と同程度であると言われている。

     観光動向…施設の立地する地域への観光動員数や動機、集客エリア、年齢層などを把握し、地域の観光客の動向を知る.周辺施設の集客動向も調べる。

     競合施設…地域を共有する同じ施設との競合関係を調べるとともに、同時に地域内の他業種の集客施設との競合関係も把握する。最近は、その日のお天気状況によって、屋外施設や屋内施設を選択する。必ずしも、同地域の同類施設が競合施設とは限らない.あらゆるものが競合関係となると考える時代である。

施設力

     施設の老朽化度(バリアフリ−対応、清涼感、快適性)

     施設の付加価値の発見…施設の魅力は、直接お客に触れる部分なので、施設の特徴を出し、他の施設と差別化された個性を発揮する時代である.

商品力

     飲食商品の地域特殊性

     物販商品の地域特殊性

     地域商品の物流

     人的サービス(基本とエンターテインメント)

     物的サービス(アメニティー・ユニフォーム)

今、飲食・物販施設では地産池沼が注目されている.そうした地域の特性を生かした、商品づくりが求められる.特に、最近は地域素材の物流が課題となっている。人的にも、物的にもサービスの高度化が求められる。

組織力

     財団法人の再構築…現在の経営者の経営能力、継続性、新たな経営者の導入への判断

     運営組織の再構築(人材の有無・教育)…サービス産業は運営組織の人材が最も大切である.したがって、現在居るスタッフの中から再生事業に向く人材を探し出し、再教育する。最悪の場合は新規募集で集める。

     コミュニケーション(報連相、会議、ミーティング)…繁盛している施設ほど、報告、連絡、相談の3つの原則がしっかりしていて、忙しい時間内に会議やミーティングが行われている.スタッフレベルが高い。

     販売組織(広報とセールス活動)…いくら良い商品やサービスを用意しても、その存在が伝えられなければ、意味がない。そのためには、外部の施設、組織との連携、旅行代理店等の専門業者との連携も重要となる。

     商品企画開発…新たな商品を次々と生み出す体制と能力を備えているか。

財務力

     収益性

     生産性

     成長性

     損益分岐点(固定費と人件費)

資金調達力

事業再生にはどのような施設でも再投資が必要となる。事業再生に必要な資金を調達できる力があるか、調達能力があるかを見極める。

 

 

<参照サイト>

www5.ocn.ne.jp/~kjc/tp1.htm

www.interq.or.jp/tokyo/ohata/yuuenchi/ 01guide/3kantou/ksw/kamakura.htm

members.aol.com/yasuharaoffice/brand/sub2.htm

www.tokaiob.jp/211forum2-4s.htm